フラップレス手術と他のインプラント施術の違い
歯肉を切ることなくインプラント治療が可能なフラップレス手術。メスを使用した切開が無いので痛みや腫れもほとんどなく、短期間で全ての治療を終えることができます。
失われた歯の代わりとなり、本来の自分の歯のように使えるインプラントには、たくさんのメリットがあります。しかし、治療費が高額となる、治療期間が長い、痛みや腫れを伴うなどのデメリットもあり、治療をためらう人も多いのが現状です。
このページでは、従来のインプラント治療のデメリットをなくした治療法として注目されるフラップレス手術と、ほかの施術の特徴を比較しています。
抜歯即時インプラント
抜歯したその日にインプラントを入れる施術です。
通常、抜歯をしたら傷が回復するまで待たなければいけませんが、そのぶん手術回数が増え、治療期間も延びるという問題がありました。その問題を解消するために考えられたのが抜歯即時インプラントです。骨の量が十分にあり、重度の歯周病などがない場合に行われます。
抜く歯の状態にもよりますが、歯茎を切る必要がありません。腫れや痛みが少なく、治癒期間を短くしてインプラントを入れることができます。抜歯即時インプラントでは、抜歯後の状態に応じて縫合をすることもあります。
切らない治療である点は、フラップレス手術と同じ。フラップレス手術は歯がない箇所にパンチで穴を開けてインプラントを埋め込むので、縫合も不要です。
即時荷重インプラント
インプラント埋入と同時に仮歯を装着する施術です。
通常のインプラントは、手術の後に骨とインプラントが細胞レベルでくっつくまで、2~6ヶ月の間、歯が入らないのが普通でした。歯のない期間が長く、審美面でも食事の面でも不便だったのです。
即時荷重インプラントはすぐに仮歯を装着できるので、その日から食べ物を噛むことができます。フラップレス手術も同様に、即時荷重インプラントが行えるので、歯のない期間がない治療。フラップレス手術は切らない・縫わない手術のため、さらに治療期間を短縮できます。
基本的にはフラップレス手術との併用ができますが、検査結果次第では併用できないケースもあります。両者を併用することにより治療期間を短縮するだけでなく、身体への負担を最小限に抑えて、その日のうちに食事ができるようになります。
オールオン4
全ての歯を失った場合に多く行われる手術で、4本のインプラント体を埋め込むだけで片顎すべての歯を手に入れられる施術です。手術時間が1時間程度で済むので患者さんの負担が少なく、その日から軽い食事ができます。インプラントの本数が少ないので費用も安く済む方法です。
フラップレス手術でオールオン4を行うことも可能。時間は多少かかりますが、歯茎を切らないので負担が大きく軽減されます。こちらもフラップレス手術との併用ができますが、検査次第では併用できないケースもあります。併用を希望する方は担当医に相談することをおすすめします。
GBR
骨に幅がない人に行われる治療法です。歯肉を切開したところに適量の人工骨を流し込みます。その後、メンブレンと呼ばれる人工膜で覆って密封します。3ヵ月から5ヵ月ほどで人工骨が固まり安定します。GBR法の一番のメリットは、インプラント治療を同時進行できることです。かなりの時短を実現できるため、好んで活用する人も多いです。また、歯肉を切開するだけなので身体への負担も比較的軽いといった大きなメリットがあります。ただし、費用が多少高くなる傾向があることは理解しておきたいところです。
ソケットリフト
上顎の空洞部分に人工骨を直接流し込んで厚みを出す治療法になります。インプラント治療をするときに、厚みが足りないことを理由に治療を断られてしまった場合に利用できる手法となります。歯肉を切開し、骨に穴を開け、さらに頭蓋骨内に異物が入らないように守っている膜にも穴を開けて人工骨を注入します。こちらも3ヵ月から5ヵ月ほどで固まり安定させます。これでインプラント治療ができる10mm以上の骨の厚みを実現します。 GBRほど軽くはありませんが、身体への負担は比較的軽い部類に入る治療法です。また、流し込む人工骨は昨今、高い技術進歩もあり感染症などのリスクを低減できる完全人工骨を使用するケースも増えています。したがって、安心して骨に厚みを出すことができます。ただし、治療前のベースとなる骨は厚さが5mm以上必要となります。これ以下だと、ソケットリフトは選択できません。
サイナスリフト
ソケットリフトと同様にインプラント治療のときに厚みがないことを理由に断られてしまったときの対処治療の1つとなります。こちらも上顎の骨に厚みを持たせることができます。ソケットリフトとの大きな違いは、厚みが5mm以上なくても治療することができるということです。似たような治療方法を取りますが、内容は全く異なります。 ソケットリフトは膜の中に人工骨を流し込みましたが、サイナスリフトは、上顎の骨と空洞内部を守っている膜の間に人工骨を流し込むことになります。したがって、頭蓋骨に穴を開け、膜を分離するという難しい大々的な手術を行わないといけないデメリットがあります。結果、どうしても痛みは強くはなってしまいます。 1つ頭に入れておきたいことは、以前よりも技術が進歩し、痛みも軽減してきたことです。ともあれ、小手先の治療ではないため、しっかりとした土台を作ることが可能です。ソケットリフトと同時進行で治療をするケースもあります。
一回法
一回法は外科手術を一回のみ行います。身体への負担を少なくしたり、できるだけ治療費用を抑えたい場合に行われます。
治療は局所麻酔をかけて歯肉を切開し、インプラント埋入する際に歯肉を貫通して頭出しを行います。骨が結合したら再び歯肉を切開することなく上部構造を取り付けます。フラップレス手術との併用可能です。
二回法
二回法は外科手術を二回行います。顎の骨の状態が良くない場合や顎の骨が少ない場合に二回法は行われます。
治療は一回法と同様に、局所麻酔を行い歯肉を切開してインプラントを挿入します。歯肉を完全に被せて縫合し、骨が結合したら再び歯肉を切開して頭出しを行い、上部構造を取り付けます。フラップレス手術との併用はできません。
ソケットリフト
ソケットリフトは、上顎前歯の歯槽肉が5mmに満たない場合に行われます。歯が極端に薄いため通常のインプラント手術ができない場合に行われる手法です。
薄くなった歯を分割して、その間にインプラントを埋入します。歯が薄く割れやすい状態になっているため、高度な技術が要求されます。こちらもフラップレス手術との併用はできません。
歯肉移植
歯肉が痩せて薄くなっている場合など、インプラントを埋め込むために必要な歯肉がない場合に、他の部位から採取した組織を移植します。実際には上顎の内側あたりから歯茎を摂取して、必要な箇所に移植します。移植が無事に終わればインプラント周辺の歯肉の環境が整います。こちらもフラップレス手術との併用はできません。
【滝澤先生に聞く】インプラント施術FAQ
インプラントの施術方法はどういったものがありますか
インプラントの施術方法は、即時荷重や抜歯即時、フラップレス法などの施術方法があります。
早く歯を入れてほしいです。どんな施術が良いですか
抜歯即時であれば、抜歯をしたその日のうちにインプラントを埋入します。通常は傷口がふさがってからインプラントを埋入するため、抜歯即時は負担を軽減できる施術です。
痛くない手術はありますか
フラップレス法やOAM(大口法)であれば、歯肉を切開したりドリルを使用したりする、一般的なインプラント手術と比較すると痛みは少なくなります。
骨が足りないといわれてしまいました。インプラントを受けるために必要なことはありますか
顎の骨が少ないとインプラントを十分に支えることができません。その場合はインプラントを受ける前に骨造成術を行い、人工の骨を足してボリュームを増やしましょう。
監修者紹介

滝澤 聡明医療法人社団明敬会 理事長
滝澤理事長の運営するクリニックでは、全国のクリニックでも数少ない「全症例の9割近くをフラップレス手術で行っている」クリニックです。
患者さんのためになる施術・カウンセリングを心がけており、フラップレス手術を推進するのもその思いがあってこそ。
「医療は絶えず変化するもの。だから自分の医院の診療もその変化に必ずついていく」という考えのもと、新しい技術を積極的に取り入れています。
運営者情報
ヘルスケア編集部Zenken株式会社
歯を失った場合の治療として、主流になりつつあるインプラント治療。しかしフラップレス手術は、ネット上はおろか書籍でもまだまだ情報が少ない治療方法です。
「メスを使わないインプラント」は、我々患者にとってメリットが大きいはず。そこで当編集部は、フラップレス手術を前面に押し出している医療法人社団明敬会に取材を申し込みました。
免責事項
切らないインプラント施術 フラップレス手術のすべて
監修:医療法人社団 明敬会
タキザワ歯科クリニック
03-3685-1444
湘南藤沢歯科
0466-37-3090
一般的な費用相場
190,000~400,000円程度(税抜)
※インプラント1本の埋入価格
【インプラント治療にかかる期間】
インプラント治療にかかる期間は、平均6ヶ月~12ヶ月。
主なデメリット
歯茎の骨の形状、神経の走り方によって受けられない人がいる。