抜歯即時インプラント
監修医より
抜歯即時インプラントをフラップレス手術ですることでより痛みが減る
抜歯してからインプラント手術をする場合は、抜歯した傷が治るのを待つ時間が必要となります。そのため、抜歯してから、インプラント手術を受けるまでの期間、歯がない状態に。その期間は、食生活や会話などに支障をきたす可能性が高く、心身ともに負担がかかってしまうことも予測されます。
一方、抜歯即時インプラントは、抜歯後すぐにインプラントを埋め込めるので、治療にかかる期間を短縮することが可能。そして、治療にかかる時間が短縮できるということは、食生活や会話への影響を最小限に抑えられることにつながります。
抜歯即時インプラントは、抜歯と同時にインプラント体を埋め込む治療法です。抜歯してからインプラント手術をする場合と異なり、一度治癒した歯茎をもう一度切開する必要がありません。
歯茎を切らない施術のことを、「フラップレス」と言います。従来のインプラント治療と比べると痛みが軽減できると言われており、出血が少ないのが特徴です。また、施術時間が短いのも患者さんにとって大きなメリットと言えるでしょう。


抜歯即時インプラントとは?
抜歯即時インプラントは、歯を抜いた直後にインプラントを埋入して、インプラントの治療期間を短くする治療法です。
従来のインプラント治療では、抜歯をしたら骨が回復するまで数か月待ってからインプラントを埋入します。そして骨造成、2次手術と最低でも3回、多ければ5回ほどの手術が必要でした。手術のたびに、麻酔や手術による痛みや腫れがあり、治療も長期間に及ぶため、患者さんに大きな負担がかかっていたのです。
さらに、期間をあけると骨はある程度回復するものの、歯を支える役目を失うことで退化(骨吸収)しやすくなります。抜歯前と比べて骨の量が減った状態でインプラントを埋め込むことになるため、インプラントの寿命に影響が出るというリスクも。一方、抜歯即時インプラントでは骨が殆ど減らない状態で治療することができるため、歯を抜いた直後の骨の高さと本歯を入れた後の骨の高さが、ほぼ同じ状態で保たれるといった利点もあるのです。
抜歯即時インプラントのメリット
抜歯とインプラント埋入の手術が1回で済むため、患者さんの肉体的・精神的負担が少ないことが大きなメリット。
通常のインプラント手術で発生する骨の治療期間がないため、通常より短期間での治療で済みます。抜歯した直後は回復力が高まっており、傷口や骨の治りも早め。体にかかる負担を最小限に抑えられます。
手術に恐怖心がある患者さんにとっては、手術が1回で済むというのは精神的な負担を軽減させることにも繋がるでしょう。
抜歯即時インプラントのデメリット
デメリットはほとんどありませんが、抜歯即時埋入インプラントはすべての患者さんに対応できるわけではありません。もともとの骨の量や密度によっては治療ができないこともあります。
抜歯即時インプラント流れ
抜歯即時インプラントをおこなうには、まず、十分な検査が必要です。歯科用CTスキャンなどで、骨の量や高さを検査して、抜歯即時インプラントに適合しているか調べます。適合していれば、手術を実施します。抜歯後、抜歯窩を成形して、インプラントを埋入、必要であれば骨補填材を充填します。
フラップレス手術で、1回法でおこなう場合、2回法でおこなう場合にわかれます。症状によって違ってきますが、1回法で抜歯即時インプラントと即時荷重を組み合わせて実施する場合もあります。2回法ではインプラント埋入後縫合をしてオッセオインテグレーションを待った後に2次手術をおこないます。
抜歯即時インプラントが向いている人
- 治療に十分な骨の高さや厚みがある
- 治療予定の歯の周囲の歯が重度の歯周病に冒されていない
- 咬み合わせが整っている
- 歯ぎしりや食いしばりのクセがない
抜歯即時インプラントが向かない人
- 抜歯を予定している部分の根尖病巣が大きすぎたり、歯周病の著しい感染が見られる場合
- 周囲骨の吸収が著しく、初期固定の獲得が困難と思われる場合
- その他、全身的な疾患(糖尿病、血液疾患、心臓疾患など)があり、傷の治りが悪いと予想される場合
こうした症状があると、抜歯即時インプラントができない場合があります。
抜歯即時インプラントをフラップレス手術ですることでより痛みが減る
通常のインプラント施術よりも身体への負担が軽くなる特徴を持っています。その根拠は大きくは以下の2点です。
- 抜歯即時インプラントは手術回数が少なくて済むため身体への負担が軽い
- フラップレスであれば切らずに治療することができるため治癒が早い
見て分かる通り、身体への負担が軽いメリットがあることが分かります。それと同時に精神的な負担も比例して軽くなります。まさに至れり尽くせりのため、ぜひ一考してみてください。
しかし、フラップレス手術はやれるかどうかは検査をしてみないと分からないところがあります。ということで、フラップレス手術がどんな手術か症例を使って紹介をしましょう。
抜歯即時インプラントのフラップレス手術症例
本症例は「日本歯周病学会50周年記念大会プログラムおよび講演抄録集」を参考に紹介をしています。[注1]
患者の情報は以下のとおりです。
- 年齢:67歳
- 性別:男性
- 症状:右上前歯に痛みがある状態
- 状況:10年前に右上にある中切歯の補綴治療を行う。約2か月前から、その場所に違和感を覚えるも痛みがないため放置してしまう。しかし、来院する前日から痛みが出てきた。また、脳梗塞を患いワーファリンを服用中という状況。
上記の患者に、フラップレスにて抜歯即時インプラントの治療を行います。懸念点は、やはりワーファリンを服用中ということです。抗凝固剤のため、治療でのダメージを最小限にしたいところ。
結果は、本治療のメリットが最大限に生かされ、身体への負担も軽く、治療12周目よりプロビジョナルクラウンを装着してメンテナンス状態へ移行することに成功しています。
[注1]吉竹歯科医院・のぶとう歯科医院:フラップレスサージェリーによる抜歯即時埋入の一症例[pdf]
明敬会の抜歯即時手術
抜歯即時手術の費用
抜歯即時手術の費用 8万円
抜歯即時手術の費用例(奥歯)
インプラント体:オステムTSⅢA・13万
アバットメント:5万円
被せ物:ジルコニア・5万
手術費用:手術準備管理費+抜歯即時・10万
合計:33万
オススメのメーカー(ネオデント・ジンマー)とその費用
ストローマンのセカンドラインとして、令和元年6月、日本でも承認済みの新しいインプラントです。
ヂュアルスレッドで柔らかい骨から硬い骨まで様々な骨質に対応するので、即時荷重・抜歯即時に最適と言えるでしょう。
NEODENT社GM Helix
- インプラント体 170,000円
- アバットメント 60,000円
【滝澤先生に聞く】インプラントのFQA
抜歯即時が出来る人は?
骨の量や質が一定以上の基準を満たせば、抜歯即時インプラントをすることができます。 もともと、インプラント手術自体が、骨の量や質によっては受けることが不可能な手術です。なぜなら、あごの骨にインプラントを埋め込むからです。 抜歯即時インプラントは、従来のインプラント治療よりも骨の量や質の基準が厳しくなっています。そのため、従来のインプラント治療は受けられるが、抜歯即時インプラントは適用できないというケースもあります。
抜歯即時の費用は?
インプラントにはいくつも種類がありますが、かならずしも高額なインプラントを選ぶ必要はありません。自分に最適なものを選ぶことが大切です。また、インプラント治療で高額な治療費を支払った場合は、定の金額の所得控除を受けることができるという医療費控除の制度もあります。医療費控除は医療費の負担を軽減するために設けられた制度 で、一年間に10万円以上の医療費が必要になった場合に所得税の一部が戻ってくるといったものです。インプラント治療は高額になりやすいので、制度を活用して負担額を減らしましょう。
抜歯即時インプラントはどんなことをするの?
まず初めに口の中のクリーニング、続いて麻酔をします。痛みの少ない電動注射器を用いた麻酔や笑気麻酔を使用し、麻酔注射の負担を抑えることが可能。インプラント手術は、1ヶ所につき約20分で終了します。(人工骨の使用などが必要な場合は、時間が多くかかります。) 手術の翌日には、消毒と洗浄行い、口の中の環境を整えます。抜糸は、手術から約1~2週間後。最初の1ヶ月は週1回のペースで消毒とスケーリングを行い、その後は1~2ヶ月に1回のペースで経過観察します。治癒したら、次は、インプラントと義歯を結合させるために必要なアバットメントをインプラントに装着。治癒を待ち、口の中の様子を見て、インプラントの上に被せる義歯を選択。義歯を取り付けた後は、メンテナンスと検診を定期的に行います。
抜歯即時インプラントの流れは?
初心カウンセリングを行ない、検査を実施。その後治療計画を立て、施術を行ないます。消毒・洗浄と抜歯をし、一旦治癒を待ちます。アバットメントを装着し再度治癒を待ち、義歯を取付けるといった流れです。治療後にメンテナンスと定期健診を行ないます。
抜歯即時インプラントのまとめ
ダウンタイム・痛み・価格
抜歯即時インプラントは、通常のインプラント治療に比べて痛みやダウンタイムが軽減されます。
今までのインプラントの治療では、抜歯後にインプラント治療を行えるようになるまで数か月~半年もの間、待たなければなりませんでした。その後インプラント埋入を終えて噛めるようになる(ダウンタイム)だけでも2~3ヵ月ですから、治療期間は最低8ヵ月かかったことになります。その間、数回にわたる手術のための痛みや腫れによる患者さんの肉体的・精神的負担は大きなものでした。
しかし、抜歯即時インプラントでは抜歯と同時にインプラントを埋め込むため、通常なら痛い思いを2回するところ、1回で済みます。骨の回復を待つ期間がなく、それだけ早く次のステップに進めるので、負担が大きく軽減されるのです。
平成24年4月から症例によっては健康保険が使えるようになりましたが、がんなどで移植を行った場合や先天性疾患の症例などに限られます。そのため、基本的にインプラントは自由診療。初診からレントゲン撮影や手術で必要になるさまざまな検査、手術費、上部構造の製作費など、治療が全て終了するまでに必要な費用をしっかりと確認してから治療を受けるようにしましょう。
適切な費用は一概に言えませんが、中心価格帯で1本30~50万くらい、抜歯即時インプラントであれば、補填材や仮歯などの費用が追加になります。また、使用するインプラントのメーカーによっても金額に差が出ますので、高い医院では60~100万円のところもあるようでした。
監修者紹介

滝澤 聡明医療法人社団明敬会 理事長
滝澤理事長の運営するクリニックでは、全国のクリニックでも数少ない「全症例の9割近くをフラップレス手術で行っている」クリニックです。
患者さんのためになる施術・カウンセリングを心がけており、フラップレス手術を推進するのもその思いがあってこそ。
「医療は絶えず変化するもの。だから自分の医院の診療もその変化に必ずついていく」という考えのもと、新しい技術を積極的に取り入れています。
運営者情報
ヘルスケア編集部Zenken株式会社
歯を失った場合の治療として、主流になりつつあるインプラント治療。しかしフラップレス手術は、ネット上はおろか書籍でもまだまだ情報が少ない治療方法です。
「メスを使わないインプラント」は、我々患者にとってメリットが大きいはず。そこで当編集部は、フラップレス手術を前面に押し出している医療法人社団明敬会に取材を申し込みました。
免責事項
切らないインプラント施術 フラップレス手術のすべて
監修:医療法人社団 明敬会
タキザワ歯科クリニック
03-3685-1444
湘南藤沢歯科
0466-37-3090
一般的な費用相場
190,000~400,000円程度(税抜)
※インプラント1本の埋入価格
【インプラント治療にかかる期間】
インプラント治療にかかる期間は、平均6ヶ月~12ヶ月。
主なデメリット
歯茎の骨の形状、神経の走り方によって受けられない人がいる。